つくる、受け継ぐ、京都の美

古くからものづくりの伝統が息づく京都には、暮らしを豊かにしてくれそうな手仕事の逸品がたくさん。職人さんが作った商品を買うのも楽しいですが、せっかく京都に来たのなら、自分の手で作ってみるという選択肢も!手軽に楽しめるクラフト体験で、京都の美を生み出す「つくる」の世界をのぞいてみせんか。


京都で受け継がれる“ものづくり”の伝統

794年の平安遷都からおよそ1000年もの間都が置かれていた京都は、最先端の技術と優秀な職人が集まるものづくりの中心地でもありました。貴族や武士たちの生活を彩った西陣織、社寺建築とともに発達した金属工芸など、さまざまな伝統産業が京都で花開きました。こうしたものづくりの伝統は現代の京都にも脈々と受け継がれ、伝統工芸品はもちろん、優れた電子部品や精密機械なども世界中に送り出されています。
今も昔も京都の街を支え続けている、「つくる」という営み。実際に目で見て、手で触れて、その魅力を深掘りしてみてください。


楽しく学べる“職人技”の美

近年では、京都が誇る伝統の技を気軽に楽しめる手づくり体験もたくさん!古くから受け継がれる技術について学びながら、世界に一つだけのアイテムを作ってみては?

【嵐山いしかわ竹乃店】〜 暮らしに根付いた竹細工を作ろう 〜

  • まずは竹の材質を理解するところから。なめらかな質感です

  • 節の部分が上になるように調整しながら、交互に編みます

  • 竹を順番に重ねたまま結び、側面を形作ります

  • 全方向を結ぶと丸みを帯びて籠らしくなってきます

  • 手で押しながら、理想の丸形をつくっていきます

  • 余分な部分は切って調節します

  • 飛び出している部分を決まった位置に差し込んだらできあがり!

昭和10(1935)年から続く竹工芸品の老舗「嵐山いしかわ竹乃店」。伝統的な花籠や茶道具をはじめ、アクセサリーや雑貨などの身近なものまで幅広く展開しています。嵯峨野で採れた上質な竹を用いた工芸品の数々は、熟練の竹工芸職人が手作業で製作したもの。実際に作業している様子を気軽に見学できるのも印象的です。
竹籠編み体験では、四海波籠(しかいなみかご)という小ぶりな籠を製作。職人による手引きを受けながら、本格的な手編みの技を体験することができます。棒状だった竹ひごがしなやかに形を変え、籠の形に仕上がっていく様子は興味深いもの。花生けや小物入れなど多様な用途で使えるほか、年月とともに変化する竹の色合いも楽しめます。

\知って使うと、さらに楽しい!/

変幻自在な竹の魅力

「竹かんむりの漢字が入った熟語が何百とあることからわかるように、竹は日本人にとって身近な存在でした」と、店主の石川恵介さん。「そのまま切ればコップ、裂いたら籠にもなる。竹ほどいろいろな道具になる植物はなかなかありません。日本の暮らしの中に根付いてきた竹という素材を見直すことで、より豊かな暮らしを送ってもらえたら嬉しいです」。
同じ素材から作られた製品でも、一つひとつ表情が違う竹細工は、ただ置いておくだけでも心を豊かにしてくれそう。古き良き日本の工芸品を、日常に取り入れていきたいものです。


【ANDO】

和の手仕事を気軽に体験

大正12(1923)年創業の和装小物メーカー「ANDO」。伝統工芸士によるワークショップでは、Tシャツや風呂敷など4種類のアイテムの中から選んで、本格的な絞り染めが体験できます。絞り方や染め方によって仕上がりは十人十色。自分だけのオリジナル商品ができあがります。

【山田松香木店】

世界に一つ、自分だけの香り

江戸時代から続く「山田松香木店」で、日本人独自の感性で築き上げられた香り文化を体験できます。数種類の香原料を混ぜ合わせて自分だけの匂袋や薫物(煉香)を作る調香体験が人気です。ルームフレグランスなどとして、和の香りを手軽に生活に取り入れてみては?


知恵が詰まった“転生”の美

古き良き伝統やモノがたくさん受け継がれてきた京都だからこそ、 “転生” の知恵も数多く存在します。古びたり壊れたりした思い出の品や、流通にのせられない食品など、捨てるには惜しいものを生まれ変わらせて新たな魅力を楽しみましょう。

【INCENSE KITCHEN】〜 新鮮なフードロス抹茶を目でも楽しめるお香に 〜

  • 最初に、お香の種類や歴史、香炉の使い方のレクチャーを受けます

  • 製作開始!材料である抹茶・樹皮の粉末・水を混ぜ合わせます

  • めん棒でまとめていきます。だんだんと形になってきました

  • 手で練ります。なめらかになるまで練ると仕上がりが綺麗に!

  • 型押しをしていきます。端までしっかり押すのがポイントです

  • 綺麗にできあがりました!慎重に型から外します

  • 完成!好きな型を選んで5~6種類ほど作ることができます

  • 1週間ほど乾燥させたら、専用香炉で香りを楽しみましょう

「INCENSE KITCHEN」は、機械や装置の隙間に残留したフードロス抹茶を活用し、お香「KOTOHA 香と茶葉」を製造・販売する宇治市の企業。『源氏物語』ゆかりの古刹・恵心院を会場に、香道や茶道に明るい講師によるお香づくり体験を楽しむことができます。
フードロス抹茶を水や樹皮の粉末と練り合わせ、木型で抜いていきます。木型は、季節の紋様や京都らしいモチーフなど種類豊富に揃い、お気に入りを選ぶ時間もワクワク!型抜きに失敗しても、お香が乾く前ならやり直し可能なので安心です。
作ったお香は、専用香炉&キャンドルと一緒にお待ち帰り。煙が出ないタイプのお香なので、室内でも気兼ねなく使えます。抹茶100%の芳醇な香りで宇治の思い出に浸りましょう。

\知って使うと、さらに楽しい!/

日常に取り入れたい、京都の「始末の心」

かわいくて、いい香りで、その上フードロス対策にもなる「KOTOHA 香と茶葉」。「大切にしているのは、京都の『始末の心』です」と、INCENSE KITCHENの代表・後藤恭子さんは明かしてくれました。「フードロス抹茶は、食品として販売こそできないものの、飲むこともできるほど高品質。そのときどきでさまざまな品種が混じっているのも魅力の一つです。お香作りをきっかけに、宇治のお茶の魅力を知ってもらえたらと思います」。京都の「始末の心」にも触れながら、茶どころ・宇治の魅力を体感しましょう。


【香凛】

カケラを継ぐジュエリー作り

路地奥にある町家で体験できるのは、金粉と漆を使って壊れた陶器を修復する日本の伝統芸術「金継ぎ」の技法を使ったジュエリー作り。300種類以上のうつわのカケラからお気に入りを選んで、イヤリングやピアス、指輪、帯留めなどが作れます。日常に取り入れやすいのも嬉しいですね。

【ゆるり工房 凸凹庵】

「つまみ細工」でキュートな小物作り

正方形の小さな布を折り、草花などを表現する伝統的な手芸技法「つまみ細工」でかんざしやブローチを作る体験を開催。種類豊富なちりめん生地と古い着物の古布を組み合わせて作品を作ります。色とりどりの生地で作る小物はほっこりとかわいらしく、乙女心をくすぐります。


つづる、贈る、“紙もの”の美

出版業の一大拠点であり、学生の街でもある京都と切っても切れない「紙」。ノートや御朱印帳、浮世絵など、こだわりの紙アイテムづくりで京都の紙文化を体感しましょう。旅の思い出を記録するもよし、大切な人に贈るもよし、楽しみ方は無限大!

【松田製本処】〜 製本職人と作るオリジナルノート 〜

  • 綴じ糸と見返し、栞を選びます。表紙には浴衣の生地をチョイス!

  • 針と糸でページを綴じ合わせ、糊で見返しを貼り付けます

  • 努さんが裁断機で紙束の断面を揃え、見映えを整えてくれます

  • 続いて背の補強。糊をたっぷり塗り、補強用の薄い布を貼ります

  • 紙束の糊を乾かしている間に、厚紙に布を貼って表紙を作ります

  • 紙束と表紙を米の糊で貼り合わせ、熱したコテでしっかり接着!

  • オプションの箔押し体験。努さんの指導で慎重に機械を操ります

  • オリジナルノートの完成。箔押しもきれいに仕上がりました!

北野天満宮に近い北野白梅町の住宅地に工房を構える「松田製本処」は、手作業による本づくり(手製本)を行う全国でも数少ない製本所。大学の論文を本に仕立てたり、雑誌などの合本を作ったりという仕事の合間を縫って開かれるワークショップでは、製本職人歴約60年の松田努さんと娘の洋子さんの手ほどきで、オリジナルのノートや御朱印帳を作ることができます。
なんといっても嬉しいのが、綴じ糸や栞、表紙などの色柄を自分で決められること!特に表紙には、製本用の布だけでなく、古い着物や浴衣の布も選べます。京友禅の下絵師だった努さんのお父さまの作品や、洋子さんがご友人から譲り受けたものなど、来歴を知ると楽しさもひとしおです。

\知って使うと、さらに楽しい!/ 

小さな工房で受け継がれる技術と心

壁一面の活字棚や使い込まれた機械類。思わず見入っていると、「この工房を開いたときに師匠から譲られたんですよ」と努さんが教えてくれました。「20歳のときから15年間師匠のもとで学びましたが、当時は『技は見て盗め』という時代。修行中は一度も機械に触らせてもらえず、独立後試行錯誤しながら使い方を学びました」。
ワークショップで使う和服の生地も、多くの人の手を渡ってきたもの。「バックグラウンドのある古い布は、特に海外の方から人気。日本のお客様からも、『家族の着物をノートにしたい』とご相談いただくことがあります」と洋子さん。技と心が結晶した自分だけのノート、どんなふうに使おうかワクワクが膨らみますね。


【京からかみ体験工房 唐丸】

京からかみの御朱印帳で社寺めぐり

表具などに用いられる「京からかみ」は、版木を使って伝統文様を和紙に手摺りする技術。3種類の版木の中から選んだ文様を自分で和紙に摺り、御朱印帳に仕立てる「御朱印帳づくり体験」が人気です。和紙も20色以上あり、自分だけのオリジナルが作れますよ。

【竹笹堂】

職人による浮世絵刷りに惚れ惚れ!

竹笹堂は、明治24(1891)年に創業した竹中木版を母体とする木版画の工房兼店舗。浮世絵実演講座では、葛飾北斎「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を使って、職人が浮世絵摺りを実演してくれます。見学後は骨線(こつせん)とよばれる輪郭線の摺りを体験!伝統工芸の体験は旅の思い出にぴったりです。


【番外編】お寺でつくる、町家でつくる

京都で「つくる」を楽しむなら、ロケーションにもこだわりたい!そんなあなたにおすすめなのが、お寺や町家で楽しめるクラフト体験です。信仰の営みや暮らしの知恵が息づいた特別な空間で、料理や木彫、友禅染など、個性豊かな体験に挑戦してみませんか。

【東林院】〜食を通して禅の心を学ぶ〜

妙心寺の塔頭「東林院」は、沙羅双樹の寺とも呼ばれる通常非公開の寺院。毎週火・金曜に、西川玄房住職による精進料理体験教室が開かれます。禅の教えを学びながら2~3品を作り、全員で試食。美しい庭を眺め、命に感謝しながらいただく料理は格別の味わいです。

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【龍岸寺】〜阿弥陀さまの眼差しのもとで仏像づくり〜

「ドローン仏」など新しい取り組みで話題を集める龍岸寺で体験できるのが、1日かけて“木のわらべ地蔵”を彫りあげる「1日仏像彫刻教室」。仏師の指導のもと行うので、初心者でも安心して参加できます。現役の塗師による「仏像の漆塗教室」も要チェックです。

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【丸益西村屋】〜情緒ある京町家で友禅染に挑戦!〜

大正末期~昭和初期の京町家を活用した京友禅の体験工房。型紙を使って絵柄を染める「摺込友禅」が体験できる「京友禅入門コース」が人気です。型紙のデザインはなんと3000種以上。ハンカチやTシャツなど、日常使いしやすいアイテムが作れるのも魅力です。

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※写真はイメージです。
※掲載内容は2025年3月7日時点の情報です。